研究概要 |
申請者らは、着磁および無着磁の白金鉄磁石合金とチタンをラットの両側脛骨にそれぞれ埋入し、静磁場を有する着磁白金鉄磁石合金の骨生成量が無着磁に比べわずかながら多い傾向を見出した。しかしながら、骨代謝の速いラットを用いたこと、白金鉄磁石合金の形状が小さく静磁場の磁束密度が低いことから、静磁場刺激による骨の成長速度に関する十分な知見を得ることができなかった。 そこで、本研究課題の初年度において、耐食性に優れ、磁気回路を利用して強力な磁気特性を示す歯科用磁性アタッチメント磁石構造体による静磁場の付与を試みた。はじめに、磁石構造体の漏洩磁場を軸対象とした2次元有限要素法により静磁場の分布を調べ、シールドリング付近で0.5T以上の磁束密度(白金鉄磁石合金の2.5倍以上)を付与できることを明らかにした。つぎに、磁石構造体のヨークとして表面を覆っている磁性ステンレス鋼のXM27および447J1の溶出イオンを求め、Cr含有量の多い447J1が生体用ステンレス鋼の316Lよりも、耐食性に優れ、Tiと同様に金属イオンをほとんど溶出しないことを明らかにした。磁石構造体を骨に直接埋入し、骨生長を調べるためには、磁石構造体表面が骨成長を阻害しないことが重要である。そこで、埋入予定の磁石構造体と同形状のφ4mm(径)×2mm(厚)に成形したXM27,447J1,316L, Tiを生後1年経過した日本家ウサギの脛骨に4週及び12週間埋入し、それらの骨親和'性を比較した。組織観察の結果、いずれの金属表面においても、埋入4週目では、軟骨性内骨化を呈した骨様組織が表面を覆っていたが、12週になると、447J1とTi表面に石灰化した成熟骨が一様に成長し、Tiと同様の骨形成が447J1表面でも可能であることが明らかとなった。 これらの結果を基に、447J1をヨークとした磁石構造体を選び、着磁及び無着磁のものを作製し、ラットよりも骨代謝の遅いウサギの脛骨および大腿骨に埋入する実験を現在行っている。
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