研究概要 |
種々の配合比のカルサイトおよび半水石膏混合物を水で練和し,ステンレス製モールド内で硬化させることによりペレット状試料を作制した。ペレット状硬化体を100℃および120℃の各種リン酸塩水溶液により水熱処理を行った。XRDによる結果では,リン酸塩溶液中での24時間水熱処理により石膏およびカルサイトはアパタイト相へと転化していたが,一部カルサイトの残存が認められた。リン酸塩の種類としてはアンモニウム塩を用いた場合がアパタイトへの転化率が最も高く,ついでナトリウム塩,カリウム塩の順であった。温度を変えても転化率にはさほど影響はなかった。このことは,液のpHが密接に影響していると考えられた。FT-IR分析,熱分析およびCHN分析結果を総合すると,Bタイプの炭酸アパタイトが主に生成しており,アパタイト中に含まれる炭酸イオン含有量は,アンモニウム塩<カリウム塩<ナトリウム塩の順に高くなっていた。また,同一塩で比較すると塩基性の高い塩ほど炭酸イオン含有量が高くなる傾向にあった。 ナトリウム塩で調制した炭酸アパタイトブロック上での,骨芽細胞の細胞付着性,細胞増殖性について,初期接着量および増殖性共にコトロールとしてのプラスティックプレートおよびHAP焼結体とほぼ同程度であった。また,ALP活性およびオステオカルシンといった分化マーカーも第3リン酸ナトリウムで調制した炭酸アパタイトではHAP焼結体より有意に高くなっていた。破骨細胞を炭酸アパタイトブロックおよびHAP焼結体上で4日間培養したところ,HAP焼結体では,破骨細胞による吸収窩は観察されなかったが,炭酸アパタイト上では吸収窩が観察され,調制した炭酸アパタイトの吸収性が確認できた。
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