種々の配合比のカルサイトおよび半水石膏混合物を水で練和し、ステンレス製モールド内で硬化させることによりペレット状試料を作製した。また、カルサイトの他に、炭酸カルシウムの多形の一種であるバテライトおよびアラゴナイトを用いた試料も作成した。ペレット状硬化体を種々のリン酸塩水溶液を用いて100℃で水熱処理を行った。XRDによる結果では、リン酸塩溶液中での24時間水熱処理により石膏および炭酸カルシウムは大部分アパタイト相へと転化していた。使用した炭酸カルシウムのうち、もっとも溶解性の高いバテライトを用いた場合が、転化速度は大きくなる傾向にあった。カルサイトー石膏硬化体をNa塩で処理した場合に処理後の強度が最も大きくなり、第3リン酸塩の場合でDTSが約4MPaであった。生成した炭酸アパタイトは、いずれの炭酸カルシウムにおいてもほぼBタイプであり、アパタイト中に含まれる炭酸イオン含有量は10〜22%の範囲にあった。Na_3PO_4で調製した炭酸アパタイトブロック上での、骨芽細胞の初期接着量および増殖性、HAP焼結体とほぼ同程度であった。しかし、ALP活性およびオステオカルシンの発現は第3リン酸ナトリウムで調製した炭酸アパタイトではHAP焼結体より有意に高くなっていた。破骨細胞による吸収実験では、HAP焼結体では、破骨細胞による吸収窩は観察されなかったが、炭酸アパタイト上では吸収窩が観察され、調製した炭酸アパタイトの吸収性が確認できた。
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