研究概要 |
我々はこれまでに、高脂血症治療薬statinの全身投与がインプラント周囲の骨形成に有効であることを報告した。また、statinの局所投与においても骨芽細胞の分化増殖促進、および破骨細胞の分化抑制効果を確認している。しかし、局所投与においては、薬剤を局所に長期間とどめることが困難であるため、全身投与ほどの骨増生効果は得られていない。そこでstatinの局所投与が最大限の効果を発揮するためには、適切なドラッグデリバリーシステム(DDS)および足場(scaffold:Sc)が必要であるとの仮説のもと、昨年度は種々のDDS,Scと数種のstatinを検討し、骨形成に促進的影響を確認することができた5今年度はin vitroにおいてstatinが骨芽細胞系、破骨細胞系にどのような影響を与えているかを分子生物学的に検討した。 骨芽細胞は、smadを介したシグナリングを通じて分化を促進し、MAP-kinaseを介したシグナリングを通じて増殖を促進している。また、破骨細胞に関しては、RANK-RANKL系、LPS,TNFによる促進が知られているが、それぞれ細胞内のシグナル伝達経路が異なる。ここでは骨芽細胞、破骨細胞それぞれに関し、どのシグナル伝達経路が活性化/遮断されているのかをRealtime PCR法を用いてin vitroにて検討した。その結果、骨芽細胞系に関しては、スタチンはsmadを介したシグナリングを通じて骨芽細胞の分化を促進する可能性が示唆された。一方破骨細胞系に関しては、RANK-RANKL系、LPS,TNFによる促進とスタチンの関連性に関しては一定の見解を得ることができなかった。
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