研究課題
骨欠損部位を補填して治癒を促すには、自己の健常部位の骨組織にあえて侵襲を加え、一部採取した骨を移植するという自家骨移植が最も効果的方法である。しかし、健常部位に侵襲を加える上、移植すべき良質な骨組織を有さない骨粗鬆症等の患者においては骨組織の採取が困難であることから、自家骨の代用になる高性能な骨代替材料の開発が不可欠である。本研究課題では独自の水熱法にて開発した柱状粒子セラミックスを用いて、自家骨移植に代わる高機能な骨代替材料を開発することを目指している。平成20年度は独創的な方法で均質な柱状粒子ハイドロキシアパタイト(HA)球状顆粒を作製する技術を確立し、作製した顆粒をラット右側大腿骨骨欠損部位に移植した後、坐骨神経切断による不動化処置を施した。2週間の不動化処置により右側大腿骨組織は左側と比較して著明に骨量が減少したが、HAT顆粒を移植した部位では周囲に比べて有意に骨量が多く、かつ、骨欠損部位にHAを移植しない対照群に比べて多くの骨形成が認められた。さらにこのHA球状顆粒は、柱状粒子HAブロックでの結果と同様に緩徐で良好な生体内吸収性を示した。HAは生体内で吸収されないことから、本研究において我々が世界で初めて生体内吸収性のHAの開発に成功したことになる。さらに柱状粒子球状顆粒セラミックに破骨細胞形成因子RANKLを含ませると、その表面に破骨細胞を誘導することができることを培養細胞実験で確認した。RANKLを含ませた柱状粒子球状顆粒セラミックをラットの大腿骨及び頭蓋骨に移植して破骨細胞によるセラミックの吸収と骨組織の再生への影響を検討したところ、移植初期にRANKLを含ませたセラミックの周囲には破骨細胞が多く出現する傾向が見られた。これらの結果から、我々が開発した柱状粒子セラミックは優れた骨代替材料であるとともに、蛋白等の担持によりさらに機能を高めることが可能であると判断された。
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