研究課題
最終年度においては、特に、2価の銅イオンが好中球とマクロファージの細胞生存率と酸化ストレス及びDNA損傷に及ぼす影響に検討を加えた。1.好中球としてマウス腹腔にチオグリコレートを注射し12時間後にPBS(-)で回収した多形核白血球(PMN)とヒトHL-60細胞を6日間G-CSFとDMSOで誘導培養した好中球様細胞を用いた。細胞生存率の測定にはCell Counting Kit-8(同仁化学)を用い、PMA刺激直後の活性酸素(O_2-)の測定には、MPEC試薬と化学発光測定装置(アトー)を用いた。2種類の好中球(培養1時間)では銅イオンに対して濃度依存的な細胞生存率の減少傾向と活性酸素量の増加傾向が認められた。また、高濃度の銅イオンが好中球に作用すると多量の活性酸素を生じ、組織障害と歯科用合金の腐食に繋がると考えられた。2.マクロファージには200nMのPMA(フォルボールエステル)で2日間誘導培養したヒトTHP-1細胞を用いた。試験培地には塩化第2銅由来の2価銅イオンを最大500マイクロモル/L配合させた。細胞生存率と活性酸素測定以外に、HEL免疫染色、抗8-OHdG免疫染色とTEM/EDX観察を行った。マクロファージ(培養1日)の細胞生存率も銅イオンに対して濃度依存的に減少したが、活性酸素の産生は微弱で検出できなかった。しかしながら、高濃度の銅イオンを吸収したマクロファージは酸化ストレスに起因する抗HEL免疫染色(脂質の酸化的損傷)や抗8-OHdG免疫染色(DNAの酸化的損傷)に陽性であり、細胞内(細胞質と核内)に多量の銅イオンを取り込むことが確認された。従って、高濃度の銅イオンがマクロファージに作用すると酸化ストレスによって細胞障害が生じると考えられた。核内に運搬された銅イオンがDNAを障害するためと考えられた。
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