研究課題
オッセオインテグレーションを荷重条件下で獲得する即時荷重インプラントは、治療期間を短縮し患者のQOLの向上に貢献することが広く認識されている。早期荷重や即時荷重インプラントを成功させるには、初期固定、良好な骨質、連結が推奨されることは認識されつつあるが、インプラントの表面に対する統一的な評価は定まっていない。僅かに表面形状の重要性が指摘されているのみであり、表面の修飾(改質)法に関しての検討は殆どなされていないのが現状である。このような状況のもと、即時荷重に最適なインプラント表面を創製することは重要かつ緊急な課題となっている。我々は、チタンの表面改質によって、骨組織接触部位、上皮下結合組織、上皮組織、および口腔内露出部位、全てに適合する表面を持つ"生体多機能化(組織適合型)インプラント"の開発研究を行ってきた。本研究は今までの研究成果を発展させ、安全確実な即時荷重/早期荷重インプラントを開発するために、タンパク質活性化薬剤の徐放システムにより早期骨形成と早期のオスセオインテグレーション(骨結合)を達成し、同時に抗菌性合成ペプチドを固定し機能させることにより細菌感染を防止するインプラント表面を開発することを目的とした。本年度は、チタン結合ペプチドにBMP-2ペプチドを担持した生理活性物質をチタンインプラントに固定し、動物埋入試験を行った。その結果、BMP-2ペプチドを担持したインプラント周囲に有意な早期骨形成を認めた。また、唾液中に存在する抗菌性ペプチドHistatin5とLactoferricinを合成するとともに、チタン表面に特異的に結合するチタン結合ペプチドとの共役ペプチドを作製し、歯周病原菌に対する抗菌活性を検討した結果、これらのペプチドは抗菌活性を有することが明らかとなった。以上の3年間の研究成果より、特に合成ペプチドを利用した薬物送達システムによるインプラントの表面改質法は、早期の骨結合能とバイオフィルム抑制能を併せ持つ多機能性を有し、即時荷重インプラントに適した方法であることが明らかとなった。
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