研究概要 |
前年度に引き続き,計画に従って実験を実施した.間接修復用コンポジットの重合条件,すなわち光照射時間,照射器光源の種類は材料硬化後の耐摩耗性と物性に影響を及ぼした.光源については400-500nmの範囲の分光放射照度が高いものを使用すると材料の硬化後物性が優れ,耐摩耗性が向上することを明らかにした.同じエネルギーの光源であれば,照射時間が長いほど硬化後物性の向上が見られた.しかし,時間と物性の関係は比例的ではなく,上限を認めた.ある種の材料においては光重合の後で加熱重合を行うと,材料の物性が格段と向上することが明らかとなった.以上から,高性能光線照射器を使用することで,マトリックスの重合性を改善できることを示した. 摩耗試験後の表面性状は走査型レーザー顕微鏡で記録した.重合率が高いと思われる試料は摩耗試験後にささくれた状態の表面が少なかった.したがって表面の滑沢性も高かった.摩耗量は顕微鏡の数値を計算機にて読み取り,三次元的に分析した.その結果,硬化後物性が高い試料は摩耗量が少なく表面の微小破折も少なかった.また,材料別では無機フィラー含有量が高いほど,耐摩耗性に優れていた. 分光放射照度計を用いて重合器から照射される光の波長とエネルギーを測定した.放射照度は光源に依存するため,種々の光源について,距離,部位別の放射照度を測定した.同じ材料を重合する場合,光エネルギーの高い重合器を使用する方が硬化後の物性に優れ,耐摩耗性も高かった.光源から試料までの距離は物性に影響するが,距離とともに,照射方向,角度も影響した. 繊維強化型複合材料およびコンポジットの界面における破折,劣化,摩耗の原因追求とそれらを防止するための方法について,3成分系摩耗試験機を用いて検討中した.材料界面に接着材またはプライマーを使用すると,未使用の場合に比して劣化が少なく,耐摩耗性にも優れることを明らかにした.
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