| 研究概要 |
仮骨延長法は骨周囲組織も延長させることから組織延長法という概念でとらえると,その治療スケジュールは骨形成が律速段階と考えられる.そこで骨以外の組織の延長を優先してまず細胞の足場を作っておき,骨形成性細胞と血小板中の増殖因子を補充することにより延長部の骨化が促進されることをわれわれは明らかにしている.
本年度は臨床用骨延長装置の改良,骨延長実験モデルの開発とそれを用いた延長部への骨形成性細胞・多血小板血漿複合体の注入実験をし,成果を得た.
1.臨床用骨延長装置の改良
われわれがすでに開発した多方向性骨延長装置をさらに改良して,実用性の高いものを設計し製作した.これについて論文発表をした.
2.延長部への骨形成性細胞・多血小板血漿複合体の注入
(1)骨延長実験モデルの開発
ウサギの上顎骨頬骨突起基部で骨延長をする装置とそれを用いた実験モデルを開発した.このモデルにより延長が咬合関係に,また逆に咀嚼が延長部に影響をおよぼすことがなくなったため,顎骨の延長部における骨形成についてより精度高く評価することが可能になった.これについて学会発表をした.
(2)延長部への骨形成性細胞・多血小板血漿複合体の注入についての動物実験
ウサギ自己腸骨骨髄液から間葉系幹細胞を分離し培養して増殖させた後に骨形成性細胞に分化誘導した.
上記モデルの延長部に,骨形成性細胞・多血小板血漿複合体(実験1),多血小板血漿のみ(実験2),生理食塩水(対照)のそれぞれを延長終了時に注入した.その結果,実験1,2とも対照と比べて,さらに実験1は実験2と比べて,有意な骨化促進を延長部において認めた.延長部への骨形成性細胞・多血小板血漿複合体の注入はその骨化を促進させることを確認した.
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