研究概要 |
Differentiation-inducing factor(DIF)は,細胞性粘菌が分泌する部室で粘菌の柄細胞への分化を誘導する物質として単離され,哺乳類細胞でも分化誘導や増殖抑制を示すが,ターゲット分子は全く不明であった。最近,われわれはphosphodiesterase(PDE)1がDIFのターゲット分子であることを世界で初めて発見した。PDEは11種類(PDE1からPDE11)あり,cAMP濃度等を調整する。これまでに口腔や皮膚由来悪性黒色腫細胞でPDE1以外のPDE発現を発見し,更に,これらの細胞でDIFが細胞増殖を抑制することを確認した。また,PDE1阻害剤の多くが他のPDEを阻害することが報告されるようになり,DIFもPDE1以外の他のPDEをターゲット分子とすることが考えられた。 悪性腫瘍細胞でのPDE遺伝子の異常を確認するために細胞よりトータルRNAを抽出し,電気泳動でトータルRNAの状態を確認後,RT-PCRで増幅し,電気泳動でPCR産物のサイズを確認した。PCR産物をTAcloningにてプラスミドベクターに導入後,大腸菌にプラスミドベクターをトランスフェクションし,寒天プレート上でコロニーを選択した。選択したコロニーをLB培地で培養し,プラスミドを精製した。目的のPDEが挿入されているのを制限酵素処理で確認後,シークエンサーでシークエンスを行った。ヒトロ腔由来悪性黒色腫細胞では種々のPDEアイソザイムが発現していた。PDE1A,PDE1C, PDE2A,PDE4B,および,PDE4D遺伝子の検討では,数カ所遺伝子異常が確認できたが,アミノ酸レベルでは異常は認めなかった。
|