研究課題/領域番号 |
18390549
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
浦出 雅裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70104883)
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研究分担者 |
櫻井 一成 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30129118)
岸本 洋充 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30291818)
野口 一馬 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (50309473)
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キーワード | 口腔癌 / 腺様嚢胞癌 / 浸潤 / 転移 / ケモカインレセプター / CXCR4 / 予後 |
研究概要 |
本研究は、口腔癌の転移機構をケモカインシグナルの観点から解析することを目的とする。本年度は、口腔癌臨床材料、口腔癌培養細胞およびヌードマウスに移植した口腔癌細胞のリンパ節転移および血行性転移モデルを用いて、ケモカインおよびケモカインレセプター発現を免疫組織学的、細胞・遺伝子工学的に検索し、以下の結果を得た。 1.口底癌由来KB癌細胞にCOX-2遺伝子を導入した高発現クローン(KB/COX-2)は、対照(KB/neo)に比べ、高いPGE_2産生、細胞運動能および浸潤能が有意に増強し、ケモカインレセプターCXCR4蛋白発現増加、E-カドヘリン発現の減少を認めた。 2.KB/COX-2は、KB/neoに比べ、ヌードマウス皮下移植における造腫瘍性が高く、腫瘍増殖も速かった。また、口底部への同所性移植では、KB/COX-2はKB/neoに比べ、強い局所浸潤性を示し、頸部リンパ節転移や肺転移率が高かった。さらに、左心室注入ではKB/COX-2は、高率に全身多発性転移を来した。 3.肺やリンパ節に高率に転移をおこす唾液腺腺様嚢胞癌の臨床材料9例を用いて、CXCR4発現と転移、予後の関連を調べた結果、CXCR4高発現の症例で肺やリンパ節転移を認め、予後不良であった。それらの組織型には節状型(cribriform type)のほかに充実型(solid type)が含まれていた。 4.上記9例の中の2例より、すでにヌードマウス可移植性の腫瘍系を樹立しているが、1例(ACCY)は篩状型であった組織型が、継代を重ねるに従い、増殖速度の増加とともに組織型に充実型が混在するようになり、継代15代目にはCXCR4発現の上昇が免疫染色でのLabeling indexおよびウエスタンブロットで確認された。もう1例(ACCI)は、同じく篩状型を示す腺様嚢胞癌であったが、継代2代目に頸部転移を生じたため、それをヌードマウスに移植して腫瘍系(ACCIM)を樹立した。ACCIMは、ACCIに比べ、著しく増殖が速く、またリンパ節や肺転移を形成した。ACCIMでも、免疫染色、ウエスタンブロット、RT-PCRによりCXCR4の発現増強がで確認された。 以上の結果から、CXCR4は唾液腺癌を含む口腔癌の増殖・浸潤・転移に深く関わっていることが示唆された。
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