研究概要 |
最初に,ヒト脱落乳歯より歯髄を採取し,培養法を検討した。北海道大学病院小児歯科外来を受診した小児患者の脱落および治療上の理由で抜歯した乳歯から歯髄を採取し10%FCSを含むαMEMを使用し,温度37℃,湿度100%,炭酸ガス濃度を5%として,インキュベーター内で培養を行った。また,100unit/ml penicillin-Gを抗菌薬として加えた。培養細胞は,シャーレの底面に接着しながら増殖し,約1週間後にはコンフルエントに達し,継代培養を行った。これらの細胞をEGFを含む神経幹細胞培養液(無血清培地)に換えて,さらに2週間培養した。神経培養液に換えると増殖速度が低下したが,一部の細胞は浮遊状の細胞塊を形成し,神経幹細胞様の形態を示した。現在,これらの細胞が神経幹細胞に分化したかを,神経幹細胞のマーカーであるネスチンの抗体で染色を行い,また,RT-PCR法を用いてニューロン,アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトなどの個々の神経細胞へ分化したかを検討している。また,神経培養液にて培養した乳歯歯髄細胞を新生マウスの脳室内に移植し生着を検討したところ,ニューロンが生涯増殖し続けているといわれている側脳室周辺や海馬の歯状回に移植細胞を認めた。以上の結果より,乳歯歯髄細胞は神経幹細胞に分化し移植側において環境因子の影響を受け神経細胞に分化したことが示唆された。現在,生着した細胞が,どのような種類の細胞に分化しているかを調べるために,移植条件を検討し,また,より多くの移植細胞の生着が見られる部位を検索している。
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