研究課題/領域番号 |
18390554
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
丹根 一夫 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (30159032)
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研究分担者 |
本田 康文 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (00335663)
田中 伸明 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (90397969)
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キーワード | 下顎頭軟骨 / SZP / ヒアルロン酸 / ヒアルロニダーゼ / 機械的負荷 |
研究概要 |
正常な顎関節では下顎頭と下顎窩の間に関節円板が介在しており、これがクッションの役割を果たし、負荷に対する緩衝作用を発揮している。変形性顎関節症(OA)の発症の多くが、関節円板の前方転位を伴っていることから、下顎頭に加わる機械的負荷がOA発症のkeyfactorと考えられている。一方、生理的な条件下においてもOAが進行する場合があるごとから、未知の新規因子が機械的負荷との相乗作用により軟骨破壊に関与しているものと推察される。下顎頭軟骨は、組織学的には細胞形態や線維走行により最表層、線維層、中間層、移行層の4層から構成され、最表層はサイトカインなどめ様々な外的因子を防御するとともに、摩擦力やせん断応力に対する抵抗性を有している。近年、四肢の関節頭表層において、高い境界潤滑作用を発揮するSuperficial zone protein (SZP)の存在が明らかとなった。しかしながら、顎関節軟骨SZP発現に対するサイトカインや成長因子、機械的負荷の影響については不明である。 そこで本研究ではまず、ブタ下顎頭軟骨組織の最表層より単離した線維軟骨細胞を培養し、この細胞のSZP発現に対するサイトカインや成長因子、さらに機械的負荷の影響について検討を行った。 その結果、培養ブタ顎関節線維軟骨細胞におけるSZP発現は10ng/mlのIL-1βにより減少するのに対し、5.Ong/mlのTGF-βにより顕著に増加することが明らかになった。一方、フレクサーセルストレインユニットにて、同細胞に機械的伸張力を負荷するによってもSZP発現は増加し、5kPaに比較して15kPaという過度な伸張力下においてより顕著に増加することが明らかになった。さらに、バイオクラフトにて、顎関節線維軟骨細胞に震盪刺激を負荷すると伸張力負荷とは対照的にSZP発現は時間依存的に減少することが明らかとなった。 以上のことより、顎関節軟骨表層においてSZPの局在が認められ、その発現レベルはサイトカインにより選択的に制御されることが明らかとなった。またSZPの発現には機械的負荷が関与し、その種類や強さによって反応が異なることが強く示唆された。
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