研究概要 |
骨シアロタンパク質(BSP)は,石灰化初期に石灰化組織特異的に発現する非コラーゲン性タンパク質である。アンドロゲン受容体(AR)は,男性生殖器の分化や前立腺での細胞増殖に関与し,転写因子として作用する。本研究では骨芽細胞様細胞であるROS1712.8細胞を用いてアンドロゲンおよびARのBSPの転写に対する影響を検索した。 AR発現ベクターをROS17/2.8細胞に導入すると,ARタンパク質は核内および細胞質内で増加し,BSPmRNA量が増加した。一方,ARの過剰発現前後にROS17/2.8細胞を10^8Mの5α-dihydrotestosterone(DHT)で24時間刺激しても,BSPmRNA量は変化しなかった。-116塩基対上流までのBSPプロモーターを含むルシフェラーゼコンストラクトの転写活性は,AR過剰発現により上昇したが,DHTの影響を受けなかった。ミューテーションプラスミドを用いたルシフェラーゼアッセイの結果,ARの作用は,(AMP応答配列(CRE)およびAP 1と重複したグルココルチコイド応答配列(AP IIGRE)の両者を介すると考えられた。ゲルシフトアッセイの結果,ARの過剰発現でCREおよびAP 1/GREへの核内タンパク質の結合量が増加した。CRE結合タンパク質は,抗リン酸化CREB抗体でスーパーシフトし,抗CREBおよびAR抗体で結合量が減少した。一方,AP1/GRE結合タンパク質は,抗c・Fos抗体でスーパーシフトし,抗c-JumおよびAR抗体で結合量が減少した。以上の結果から,ARはCREおよびAP 1/GRE配列を介してBSPの転写を調節し,CRE配列にはCREB, c-Fos, c-JunおよびARの複合体が,AP 1/GRE配列には,c-Fos, c-JunおよびARの複合体が結合すると考えられた。
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