研究概要 |
本年度は,口気中の揮発性有機化合物を口腔健康度の評価に応用し,口腔保健要因との関連性を明らかにするとともに,口臭治療の予後予測を試みた。 対象者は,大阪大学歯学部附属病院口臭外来受診者のうち,初診時および治療終了時に口臭検査,口腔内診査および唾液採取を行った者63名とし,口気の評価は,官能検査,揮発性硫化物濃度および電子嗅覚装置による臭気指数を用いた。初診時に電子嗅覚装置により測定された7種類の基準ガスの臭気指数を基に,Ward法によるクラスター分析を行った結果,基準ガスの全ての臭気指数が高い値を示すクラスター1,硫化水素と硫黄系の臭気指数が高いクラスター2,硫化水素と硫黄系以外の5種の臭気指数が高いクラスター3および全ての臭気指数が低い値を示すクラスター4の4群に分類された。また,クラスター1は歯周病の有病状態,舌苔の付着や縁上プラークの付着が多い群,クラスター2は舌苔の付着が多い群,クラスター3は縁上プラークの付着が多い群であり,そして,クラスター4はこれら口腔保健要因が良好な群と特徴づけることができた。唾液中の歯周病細菌では,クラスター1と2の歯周病細菌の比率は,クラスター3と4に比較して,全てが有意ではないが高い値を示した。次に,治療の予後に関連する要因を調べるため,初診時に口臭が存在した者47名を対象とし,口臭の改善の有無により2群に分け,2変量解析を行った結果.クラスター1,歯周病有病歯率,舌苔スコア,そして,6種の歯周病細菌の比率が改善なしと有意の関連性を示し,さらに改善の有無を従属変数とした多重ロジステイック分析を行ったところ,クラスター1のみが改善なしと独立して関連性を示し,クラスター3に対するオッズ比は35.1であった。 以上の結果より,口気中の揮発性有機化合物は口腔健康度の評価に応用できる可能性があり,口臭治療の予後予測に応用できることが示唆された。
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