研究概要 |
細菌性心内膜炎をはじめ、種々の全身性感染症の起因菌としても注目される、口腔レンサ球菌の生体物質に対する付着をモデル系として、病原微生物の特定物質への特異的付着を阻害することを作用機序とする、感染症予防のための、化学合成が可能なリード化合物を同定するための方法論的基礎の確立が本研究の目的である。初年度の、標的化合物探索のための合成ライブラリー設計の戦略確立を目指した研究成果に基づき、ヘキサペプチドのN末端を選択された10種のアミノ酸(Gly,Ala,Met,Lys,Arg,Glu,Asp,His,Ile,Leu)に固定した10種類のOne Peptide on One Beadライブラリーを構築した。本ライブラリーを用いて、我々が樹立したレンサ球菌の付着を阻害する抗フィプロネクチン・モノクローナル抗体の結合モチーフのスクリーニングを開始したところ、偽陽性反応の制御が課題として示された。抗体分子内の、補体やFc受容体など抗原物質以外の分子との相互認識に関わる部位の存在がその要因と考えられたので、もう1つの付着モデル系として計画に含まれていたphosphorylcholine(PC)の認識配列の探索を先行的に実施することにした。そこでPCの結合を検出するためのプローブとして、biotinyl PCの合成を行い、合成された分子が抗PCモノクローナル抗体に結合すると同時にStreptavidinにも結合できるというbifunctionalityを有するかどうかを検定した。良好なbifunctionalityを発揮するためには、biotin領域とPC領域の間に十分な距離が確保される必要があり、そのために用いるリンカーをデザインし、炭素原子をつなぐ脂肪酸型リンカーよりもポリプロリン型ペプチドリンカー(プロリンロッドという、釣り竿の様な機能を持たせた分子をデザインし合成した)を用いてflexibilityを抑制すると効果的であることが明らかにされた。
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