研究分担者 |
松田 正巳 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (90295551)
山内 一史 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (20125967)
井口 弘子 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (60345907)
唐澤 由美子 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (40277893)
前田 樹海 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (80291574)
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研究概要 |
個人情報保護法の施行とともに,個人情報の取扱いに対する社会の関心が高まっている。医療において患者情報の共有と活用は不可欠であるが,今後,患者情報の取り扱いには,患者のプライバシーに対しての配慮が強く求められることが予想される。本年度は,昨年開発した入院患者のプライバシー認識尺度(PIPS)を用いて,患者自身の情報に対するプライバシー意識の程度を明らかにするための全国調査を行った。精神科単科を除く全国200床以上の全病院を対象とし,協力の得られた122病院の計6,141名の患者に調査票を配布した。すべての調査手続きは,所属施設の倫理委員会の承認を得てから行っている。第一次回答期限までに得られた1,017件の回答の内,データ精錬が完了した837件の回答は,男女ほぼ半々で,平均年齢57才,主要疾患は,がんが30%を占め,8割が複数の入院経験があり,今回の入院期間は平均30日であった。PIPSスコアの因子分析の結果は,昨年と同じ4因子構造を示した。因子ごとのPIPSスコア平均値は、価値観や家計の問題など5項目からなる私生活関連情報が6点満点の3.5点と最も小さく,患者のプライバシー意識がもっとも高い項目であることを示した。次いで,病名や検査結果など9項目の治療関連情報が4.0点,名前や生年月日など6項目の属性情報が4.3点,睡眠習慣や食生活など4項目の日常生活行動関連情報が4.6点となり,プライバシー意識には情報の特徴による差があることが示された。ただし,因子ごとの合計得点には地域,性別,疾患の種類などによる差は特に見られず,今回の調査結果で得られたスコアが,今後の患者個人レベルのプライバシー意識の程度を見る上での基準となる可能性が示唆された。本成果が,医療上の必要性に基づく患者情報の共有と患者のプライバシーへの配慮との両立のために活用されることを期待する。
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