本研究は、1.救急初療外来におけるナース・トリアージの実施記録とトリアージ後の診療記録を分析することから、アンダートリアージ、オーバートリアージの発生状況の把握とトリアージに影響を与えた要因を検討し、救急初療ナース・トリアージの問題点を明確にしたうえで、2.トリアージ・ガイドラインを策定しその評価を行うこと、および3. トリアージ・ガイドラインを用いたトリアージナースの教育プログラムの開発を目指すものである。方法として、アクション・リサーチ法を用いフィールドを提供してくれている1救命救急センターの看護師23名とともに実施する計画でスタートした。3年目である平成20年度には、過去2年間に実施したトリアージの実態調査の結果から、アンダートリアージに陥りやすいと考えられた、高齢者救急、およびオーバートリアージの傾向に偏りがちな小児救急に焦点を当てて、トリアージ・ガイドラインの策定と見直しをはかった。見直しにおいては、アンダートリアージが生じやすい高齢者のトリアージには、病態よりも緩慢に認知される自覚症状を引き出すこと、また、小児においては蹄泣等によるバイタルサインの正確な測定の困難さに加えて、付き添いの親の混乱を収拾できずにフィジカル所見等客観的データよりも状況的因子によって、トリアージを進めている実態から、成人のトリアージ・ガイドラインとは別に小児用、高齢者用のガイドライン(案)を検討した。ガイドラインの評価を実証的に検証するに足る大規模調査、および、トリアージ・ナース育成教育は今後の課題である。
|