研究概要 |
平成18年度の目的は,認知症高齢者が経管栄養に至る要因構造を見出すと共に,経管栄養から経口摂取への移行に成功した先行研究や実際例を基に経口摂取再開の可能性を探ることである。 方法は,国内外の文献検討および経管栄養を要する認知症高齢者にケアを提供した看護師への記録・面接調査である。 結果,認知症高齢者が経管栄養に至る要因構造として,以下に示す3次元構造が見出された。第1軸は経管栄養に至る時間軸で「急性疾患による緊急導入型」「慢性進行性疾患や廃用による緩徐導入型」,第2軸は摂食・嚥下過程における障害軸で「摂食困難型」「嚥下障害型」「摂食困難・嚥下障害併発型」,第3軸は経管栄養に至った(トリガーとなった)状態像軸で「誤嚥性肺炎や発熱の反復」「急性疾患(胃・十二指腸潰瘍や術後管理等)の治療」「治療による絶食・安静後の廃用」「脳血管疾患発症・再発による摂食・嚥下障害」「認知症やパーキンソン病など慢性退行性進行による摂食力(食欲を含む)低下」で,これらの要因によって低栄養状態となり経管栄養に至っていた。 経管栄養から経口摂取への成功事例の分析の結果,看護師による経口摂取導入のきっかけには,「全身状態の回復・安定」「摂食・嚥下力の発見」「本人の意欲」「家族や看護師の口から食べられるようになってほしいという願い」「VF検査など嚥下機能評価」「摂食・嚥下リハビリテーション導入時期」があった。これを認知症の程度別にみると,軽症・中等症の認知症では本人の「食べたい」という意思表示や,他者の食事場面に誘発された認知症高齢者の行動や嗜好品の摂食を通して観察された本人の食物への関心等が挙がっていたが,重症の認知症では舌運動など嚥下機能評価を基に導入といった特徴があった。 以上より,認知症高齢者の経口摂取再開の可能性が示唆され,今後は経口摂取再開に向けたケアスキルについて対象の特性・要因別に検討する必要がある。
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