研究概要 |
平成21年度の研究目的は,平成20年度までに開発してきた「認知症高齢者の口から食べる力の見極めとケアスキルに関するガイドライン」をもとに提供したケアの効果から,本ガイドラインの有効性を検証することである。 対象は,経管栄養を受けている認知症高齢者2人と経管栄養を受ける可能性が高い認知症高齢者3人にケアを提供する看護職である。介入方法は,対象に本ガイドラインを参考に介入対象の経口摂取への移行ならびに経口摂取維持に向けたケアを依頼した。評価方法は,介入前後の介入対象の状態像の変化と介入6カ月後の栄養管理法(経口摂取への移行・維持)で評価した。 結果,認知症高齢者5人全員が,認知症の程度(CDR,NMスケール)は重度,年齢の中央値は87歳(範囲:75-92歳),全て女性であった。経管栄養を受けていた1人は嚥下障害もなく介入4カ月後に座位での経口摂取へ移行したが,もう1入は発熱があり寝たきり状態のまま改善を認めなかった。一方,経管栄養を受ける可能性が高かった認知症高齢者3人全員が介入6カ月後も経口摂取を維持できていた。以上より,本ガイドラインは,嚥下障害がなく座位耐久性の改善が見込まれる認知症高齢者の経管栄養から経口摂取への移行,ならびに経管栄養になる可能性が高い認知症高齢者の経口摂取の維持への有効性が示されたが,対象数が少ないこと,また嚥下障害がある認知症高齢者に対する内容について今後さらなる検討が必要である。 本研究の成果は,全国学会での招聘講演などを通じて報告した他,MHK「おはよう日本」(平成21年10月26日付)で全国放送され,他職種や在宅で介護している家族からも本研究の成果をもとに実践し,改善を認めたという喜びの声が寄せられた。これまで専門職を対象にケアスキルを開発してきたが,今後は家族介護者向けのケアスキルについて新たに研究していくことの必要性が課題として挙げられた。
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