研究分担者 |
小林 浩二 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30111793)
中川 聡史 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (10314460)
川田 力 岡山大学, 教育学部, 准教授 (30263643)
森 明子 国立民族学博物館, 教授 (00202359)
横井 雅子 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授 (00383688)
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研究概要 |
本研究は,中央ヨーロッパの都市で実施されている景観整備などの再生事業によって.多くのエスニック集団が居住する地区にいかなる変化が生じているかを明らかにし、都市の変容の動向を解明することを目的としている。本年度の作業は,ブダペスト(ハンガリー)を加賀美と横井,ベルリン(ドイツ)を森と中川,ブラティスラヴァ(スロヴァキア)を小林,およびウィーン(オーストリア)を川田がそれぞれ分担して,都市再生事業のプログラムの把握と,エスニック集団(特にイスラム圏出身の移民労働者と,ロマ)の居住の実態を明らかにすることに努めた。また,中央ヨーロッパの都市構造の特徴と,近年の変化,特に観光地化とのかかわりについても考察を広げた。その結果,明らかになったことは以下の4点にまとめることができる。 1)いずれの都市においても歴史的景観の整備が進み,都市の観光地化に寄与している。その一方で,外国人やロマが居住する地区とのコントラストは拡大する一方であり,行政を中心にした市街地再開発や住宅の整備事業が進められつつある。 2)ブダペストやブラティスラヴァなど旧社会主義諸国では,住宅の民有化や土地取得の自由化とともに市街地の整備が進行した。一方,エスニック集団居住地では民有化が進まず,それが公的機関による整備事業を起こすことになり,ブダペストではロマ社会を維持するための方策がとられている。 3)ウィーンでは,町づくりや景観整備への住民レベルでの関心が強いが,外国人の意志や関心については,必ずしも十分に組み上げられていない。 4)ベルリンでは,首都整備事業の中で,区を単位にした町づくりがなされており,トルコ人の居住が集中するクロイツベルク区ではコミュニティを維持するための方策が検討されている。 以上,かつて社会主義体制にあった都市や東西分断されていた都市など,同じ中央ヨーロッパにあって異なる経緯を経た都市を同時に比較ずることによって,共通点と相違点を抽出することができた。
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