研究課題
本研究では、出来事や事象というものが社会や文化、生態などに分かれて存在しないという事実から出発し、文化や社会、生態といった特定のフィルターをとおさず、領域横断的な地域研究を行う可能性を探ってきた。本年度も、平成19年度と同様に、(1)科学技術の社会学などが培ってきたメタ方法論であるアクター・ネットワーク論に着目し、その関連分野の理論的、方法論的検討、(2)各自の資料・調査経験のアクター・ネットワーク論的な組み替え、(3)補足的な海外調査、を継続してきた。具体的には、平成20年度日本文化人類学会において人とモノのネットワークに関わる分科会を開催しこれまでの議論を深めると同時に、研究分担者による本科研研究会を4回開催した。また、補足的海外調査をインド、トルコなどで行った。このような検討をへて、各自の行ってきた地域研究の組み替えを試みることができたと同時に、理論的、存在論的な議論の整理も行った。とりわけ重要な共通認識は、モノと人(もしくは自然と社会)を対等に扱おうとする地域研究において、われわれの問いというものが、「地域とは何か」ではなく、「(人とモノと言葉からなる)地域が、(人との関係で)何をするのか」という問いであるという点である。そのため、この問いに沿って、各自の研究分野における概念体系の再構築が必要とされていることが確認された。本研究のとりまとめを行う際に、この点を基本軸として、各分担者の議論をつきあわせるように努めている。
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比較文明 24号
ページ: 21-47
文化人類学 73巻2号
ページ: 158-177
藝術 31号
ページ: 115-127