研究概要 |
本研究は、ケニアにおける開発と伝統文化の関係を、女性の社会進出にターゲットを絞って考えていくものである。今年度、戸田は、引き続きケニア共和国北東州ガリッサ県で聞き取り調査を行う一方で、これまでの科研調査のまとめとして、8月に単著を出版した。また、2008年5月24日(於:龍谷大学)に開催された日本アフリカ学会第45回学術大会において、この科研調査の成果を報告した。アフリカ女性が社会進出するためには、教育を受けることが不可欠である。ケニア共和国北東州ガリッサ県において、現地の開発NGOと共に進めている、科研の成果を具体化した「女子高校生の中退率を減少させるためのプロジェクト」について、その必要性と概要を報告した。宮本は、同じく日本アフリカ学会において、2007年の9月に実施した「ケニアのろうの女性たちは、教育によるエンパワメントをどのようにとらえているか」に関する聞き取り調査の結果を報告した。被調査者24名中、先天的に聴覚障害を持っているものは3名で、残りの21名はおたふく、髄膜炎、マラリアなどの高熱の出る疾病により聴覚を失っていた。最高学歴の者1名がBAを修了し、MAコースに在学中で、その他は、学芸大学(Teachers College, 3名)、ポリテクニーク(1名)、職業訓練校(11名)、中等学校(3名)、小学校(4名)、バイブル学校(1名)をそれぞれ卒業しており、うち1名は特殊教育の訓練証明書を持っていた。職業は、手話講師、職業訓練校の教員(裁縫など)、仕立て屋、美容師、小売業、HIV啓発運動の相談員などであった。教育を受けることができたことが職業獲得に直接つながったと答えた者が多く、この調査により、彼女たちとその家族は、「障害者」に対する「伝統的な」態度に屈せず、ろう学校で得たコミュニケーション手段を武器に社会進出している様子が明らかになった。
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