本研究では、ケニアにおける開発と伝統文化の関係を、女性の社会進出にターゲットを絞って考えていく。女性が社会進出を果たすためには、就学することがまず第一歩であるが、「女子には教育はいらない」という考えがまだ根強く残っており、さらには、せっかく就学しても、「早婚」のために中退を余儀なくされる女子学生があとを絶たない。この伝統文化の中のジェンダー格差を当事者である女性たちがどのように排除しようとしているのか、その取捨選択のメカニズムを明らかにするのが第一の目的である。また、教育の機会を奪われた女性は、公用語や国語を十分に使いこなすことができない。民族語は民族のアイデンティティの体現である一方、公用語や国語の習得は、社会進出を果たす上での必須条件である。教育の機会を奪われ、民族語しか話すことができない女性たちが、社会進出を果たすことができるだろうか。農村部における開発プロジェクトの中で、民族語だけを話す女性たちがどのような地位におかれているのかを調査し、社会開発と言語選択の問題をジェンダーの視点から明らかにすることが、2つめの目的である。
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