研究概要 |
平成19年度は,初年度に確立した調査・研究の枠組みにそって,研究分担者がそれぞれ担当するテキスト資料の収集と分析・処理を進めた。 具体的なデータの収集については,海外調査に先立って打ち合わせを行い,収集するデータのジャンルの調整,確認を行った。調査は夏期に中山俊秀がヌートカ語アハウザット方言,中山久美子がヌートカ語フピチャサト方言,渡辺己がスライアモン語,永井佳代がエスキモー語を,1〜2ケ月にわたって行った。中山久美子は当初ニティナト語資料の収集を予定していたが,適切な話者との調査日程の調整が付かず,また非常に知識の豊富なヌートカ語のフピチャサト方言話者と調査する機会に恵まれたため,予定を変更して調査を行った。 現地調査で収集されたテキストの音声データは音質の劣化がない電子フォーマットで保存している。書き起こしたテキストデータは、文法分析を加えた上で、多目的加工を意識した形でデータベース化し,コーパスのさらに充実させた。また、テキスト資料に出現する語彙をもとに語彙データベースにもデータを追加し,充実化をはかった。さらに、テキスト資料、語彙データを幅広い利用ができる研究資源とするために、データベースの内容に関して柔軟で多様な検索ができる環境の一層の充実を図るべく,既存ソフトウェアを調査し,また分析処理プログラムの開発を進めた。 この研究活動で蓄えられた方法論的知識や技術的なノウハウは,フィールドワークを基盤とした記述研究に取り組む研究者を対象としたワークショップにおいての発表などを通し,他の研究者とも共有している。こうした活動を通して,本研究の貢献を単にデータ面での蓄積を越えたものにすべく積極的に努力した。
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