今年度、真柳はベトナムおよび日本に所蔵される古医籍を調査し、データの集計・分析・報文作成を担当した。また今年度の海外共同研究者として、中国・山西省中医薬研究院中医基礎理論研究所の趙懐舟副教授に各国目録情報の調査集計を担当いただいた。以上について各蔵書機関の目録より越・中・日・韓の古医籍を抽出し、版本書誌等の嫌疑点は実地調査で解決した。このため真柳は国内4回、ベトナム1回(2009年8月3日~同9月24日)の調査旅行を行い、古医籍の書誌を収集した。趙氏は日本に1回(2009年11月7日~2010年2月4日)の研究打ち合わせ旅行を実施した。真柳と趙氏は収集した書誌データを解析し、中国古医籍が各国伝統医学体系の形成に及ぼした影響を客観的に解明する研究を継続した。 真柳がこれまで収集した資料と史料を整理した古医籍の書誌データは月刊学術誌に今年度11回、学部紀要に2回に分けて連載報告し、それらを解析した研究論文3篇が中国・日本・ベトナムの学術誌に各々掲載された。また研究成果の図書3件を出版し、各々に論文を掲載した。学会では新知見を2回、研究成果に関する他の講演を4回行った。趙氏も来日中に研究会で2回発表し、日中古医籍の比較論文2篇を日本と中国の学術誌に掲載した。今年度は当該研究の最終年のため、4年間の研究成果を検討する国際シンポジウムを2010年6月11日に開催し、真柳ほか日中韓越10名の報告論文を日中韓英の4言語で出版する翻訳作業も開始した。また同6月12・13日に真柳が会長として勤務校で開催する第111回日本医史学会学術大会でも、会長講演「日韓越の医学と中国医書」を行い、当該研究の第一次総括とする。
|