(1) 中国周縁の漢字文化圏では近世まで歴代中国医籍が流通し、各々の伝統が形成される素材とされてきたため、今なお中国医学の影響が色濃い。しかし相互には別々の体系といえるほどの相違があり、日・中・韓では研究交流に様々な困難を招いている。それは互いに相違した経緯について、客観的歴史観が共有されていないからである。 (2) そこで本研究は世界各国に現存する中国・日本・韓国・ベトナムの古医籍書誌および関連史という、主観性の混じらない史料の調査収集を第一に行う。さらに書誌データを定量史学的に4国間で比較検討し、自国中心主義を排除する。当結果に各国の歴史・地理・社会的背景をふまえ、各々体系が固有に発展した経緯を解明し、この客観的歴史観の確立により相互の理解と交流に資する。
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