研究概要 |
今年度は、当初の計画通り、サンクト・ペテルスブルク東洋学研究所所蔵に赴き、コータンおよび中央アジアの他のオアシスより出土した文書の調査を行った。調査メンバーとしては、研究代表者の荒川と分担者の吉田が中心となり、それに研究協力者として佐藤貴保を加えた。荒川は漢文文書、吉田は中期イラン語文書、また佐藤は西夏語文書を調査の対象とし、それぞれに情報を交換する必要がある場合は三人で検討を進めた。今回の調査では、まったく存在も知られていなかった未知の文書に遭遇する機会はなかったが、それでも漢文文書では以下に掲げる文書を中心に丹念な調査を加え、その作業を通じて新たな知見を得ることができた。1.Dx.18915「傑謝鎮帖羊戸」,2.Dx.18916「傑謝鎮牒牛皮」,3.Dx.18917「傑謝百姓牒為伊魯欠負銭事」,4.Dx.18918「簡王府長史王□□帖」,5.Dx.18919「大暦17年(782)銭抄」,6.Dx.18920「大暦14-15年傑謝百姓納脚銭抄」,7.Dx.18921「傑謝鎮牒」,8.Dx.18922「納羊皮暦」,9.Dx.18923「傑謝首領薩波思略牒」,10.Dx.18924「勿日本男負思略」,11.Dx.18925「六城都知事牒」,12.Dx.18926,Dx18928「傑謝合川百姓勃門羅済売野駝契」,13.Dx.18929「百姓勿娑牒」,14.Dx.18930「牛皮抄」。 とくに吉田が併行しておこなった中期イラン語(ソグド語とコータン語)文書の分析と合わせ、8世紀のコータン地区における行政システムをかなり明瞭にすることができたことが、今回の調査の最大の収穫であろう。 個々の文書内容の検討については、代表者と分担者は比較的近在の大学に勤めているので、代表者の大学で定期的に研究会を開き、そこで個々の文書の分析を共同で進めた。また調査の結果得た文書に関わる諸情報を整理するために、アルバイトを雇用して、能率的にその作業を進めた。
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