研究課題/領域番号 |
18401024
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
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研究分担者 |
平川 南 早稲田大学, 国立歴史民俗博物館, 館長 (90156654)
三上 喜孝 山形大学, 人文学部, 准教授 (10331290)
安部 聡一郎 金沢大学, 文学部, 准教授 (10345647)
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キーワード | 古代朝鮮 / 新羅 / 百済 / 木簡 / 出土文字資料 / 東アジア / 出挙 |
研究概要 |
本研究は、東アジアにおける文字文化の伝播状況の解明を目的とする。そのために、韓国において出土した木簡と中国・日本出土の木簡を比較し、古代朝鮮半島においてどのように文字文化が受容され・変容していったのか、その過程を検討してきた。 本年度は、まず韓国の扶余・双北里で出土して間のない百済木簡の情報を得たため、現地の研究機関の協力をえて調査を実施した。赤外線カメラによる判読と、その後の分析の結果、春から夏にかけて官人たちに穀物を貸出し、秋の収穫後に利子を付けて回収する「出挙」の出納状況を記録した木簡であることが判明した。百済のみならず古代朝鮮諸国において出挙に関する資料が検出されたのは最初のことであり、7世紀初頭の百済における社会・経済の実情を伝える重要な発見である。さらに、利率や書式、用語など日本で出土している出挙木簡との共通点から、百済の文字文化、行政システムが古代日本及ぼした影響関係が確認された。また、韓国出土木簡の中でもいまだ赤外線カメラによる調査がなされてこなかった河南・二聖山城出土新羅木簡を、漢陽大学校博物館において、撮影・調査した。20点余りの木簡の釈読をはじめ、これまで具体的な用途など不明であったが、新たに調度に関わる木簡でる事実と、信仰・儀式に関連する木簡である可能性を確認した。 本年は最終年度にあたり、韓国木簡検討会を毎月実施し、これまで現地で調査をおこなってきた調査成果を整理し、学界で広く共有できる釈文の作成に努めた。こうした研究成果の一部を、工藤元男・李成市編『東アジア古代出土文字資料の研究』(雄山閣、2009年3月)として公刊した。また、昨年度まで実施してきた韓国国立加耶文化財研究所との共同研究の成果を公表するため、報告書に掲載する論文の翻訳をおこなうなど、刊行準備をすすめた。なお上記の釈文は、報告書の附篇として載録する予定である。
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