初年度である平成18年度は、国内研究分担者間における2度の研究会の実施(資料収集を含む)と、夏季における四川省での資料調査・収集が主となった。 1.研究会の実施 夏季の中国での調査実施前の平成18年7月に、九州大学において、これまで判明している清朝『南部県档案』の実態のレビューと研究分担体制を明確にする研究会を開催した。さらに、平成19年2月に、熊本大学において、翌年度の調査の進め方について打ち合わせを行うと同時に、熊本大学所蔵の清朝『巴県档案』マイクロフィルム(乾隆朝部分)の閲覧と収集を行った。19世紀以降の重慶一帯の記録である『巴県档案』は、『南部県档案』から得られる情報を補完し、かつ大都市と周縁部との比較をするうえで重要となるであろう。 2.資料調査・収集 夏季に、四川省成都市の四川省档案館と同南充市の南充市档案館において、国内の研究者3名と海外研究協力者であるマシュー・ソマー(Matthew Sommer・スタンフォード大学准教授)が档案史料の調査と収集を行った。南充市档案館においては、大規模な資料整理の作業中であり、本年度は遺憾ながら『南部県档案』の閲覧はかなわなかったが、未整理部分の資料修復の経費を提供し、翌年度よりの閲覧と収集計画に関する打ち合わせを档案館の侯文俸館長と行った。このため、今年度の現地における資料収集は、四川。省档案館における『巴県档案』(光緒朝部分)が主となった。唐澤は、訴状作成上のユニークな慣行が判明する資料を得、ソマーは妻女売買の慣行についての資料を集めた。当初計画していた四川省档案館所蔵『巴県档案』マイクロフィルムの購入は、同档案館での問い合わせの結果、得ていた情報よりもかなりの高額となることが判明したので断念し、熊本大学所蔵の乾隆朝部分の閲覧・収集にとどめることとした。
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