研究概要 |
アフガニスタン中央部,バーミヤーン以西における仏教伝播の痕跡を探求する本年度の調査を2o06年9月26日より10月26日まで行なった。調査は,(1)バーミヤーン州ヤッカウラング県のケリガン仏寺跡,サレ・スム石窟,チル・ボルジ城砦跡の3次元測量,そして,(2)ヤッカウラング周辺,バンデ・アミール川流域,サリプル州における仏教伝播経路の探査を内容とする。ヤッカウラング周辺の調査では,これまで知られることのなかったクシヤ・ゴラ石窟とムシュタック石窟を新たに確認することができた。これにより,バンデ・アミール川上流域にバーミヤーン地区とは別に仏教文化圏が存在した可能性が強まった。新発見の二つの石窟については,10月31日の新聞各紙で報道された。さらに,仏教伝播研究のうえではこれまでほとんど省みられることのなかったサリプル川(サリプル州)流域でも,ネガラという石窟を確認した。ただしこれについては,悪条件が重なり詳しい調査を行なうことができず,次年度以降に持ち越しとなった。調査の報告会を兼ねたシンポジウム「仏教西漸-アフガニスタンの歴史・考古・仏教-」を2006年12月23日に龍谷大学で行ない,研究代表者の入澤は「バーミヤーン以西への仏教伝播」,調査に同行した井上陽は「クシヤ・ゴラ石窟とムシュタック石窟:2006年バンデ・アミール上流域の石窟調査」と題し報告を行なった。宮治昭は基調講演「バーミヤーンの仏教世界」,山田明爾はパネル・ディスカッションの中で「バーミヤーンとその周辺」の発表をなした。シンポジウムでは,調査の前半で行なった3次元測量の成果も公表した。シンポジウムの内容については、2007年1月4日の毎日新聞朝刊で特集記事が組まれている。
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