研究課題/領域番号 |
18401028
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山口 徹 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (90306887)
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研究分担者 |
棚橋 訓 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (50217098)
吉田 俊慈 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (70081627)
茅根 創 東京大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60192548)
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キーワード | 景観史 / 考古学 / 歴史人類学 / ジオ・アーケオロジー / オセアニア / 環礁 / 海面上昇 / 地形発達 |
研究概要 |
赤道付近の貿易風帯には環礁の島々が点在する。海抜4メートルをめったにこえない陸地は高潮や津波に対して脆弱である。なによりも陸水を持たないため、そこに定着できる動植物も少ない。それゆえに、楽園オセアニアのなかにあって環礁の島々だけは、機上からの景色とは裏腹に人間の居住にとってはきわめて厳しい環境とみなされ、19世紀の旅行記ばかりか、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新レポートでさえすべての環礁を脆弱な小島嗅国としてステレオタイプ化して扱う傾向にある。 しかし、平成18年度にフィールドワークをおこなったマーシャル諸島マジュロ環礁では、発掘調査によって確認された最下文化層の放射性炭素年代が二千年前に遡る結果となった。地球科学的研究によれば、オセアニア環礁の陸地形成は完新世後期の海面低下以降に始まったと考えられるから、この説が正しければ、マジュロ環礁では出来たての州島陸地に人間が居住を開始したことになる。これは、一見一様にみえる環礁州島にバリエーションがあることを意味する。3500mmをこえる年間降水量が形成をうながす淡水の地下水レンズに、マジュロの初期居住を支えた要因を求めることができるかもしれない。いずれにせよ、居住を開始した先史島民は地下水レンズを巧みに利用しなが、サトイモ科ミズズイキ類の栽培に用いるピット耕地を遅くとも1800年ほど前から意図的に掘削しはじめていた。 マジュロ環礁でもっとも大きいローラ州島における分布調査によって、総計195基ものピット耕地が確認された。面積は35〜7,797m^2と大小さまざまで、平均は721m^2る。地下水レンズがもっとも厚く形成される州島中央部に大型のピットが数多く分布する。地下水の水頭まで掘り込まれた耕地とその廃土からなる起伏はまさに、自然の営力と人間の営為の合わせ業が生み出した歴史的産物と考えてよい。
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