研究概要 |
1.研究の内容:20年度においては,前年度に実施したモンゴル・カラコルム遺跡出土陶瓷器について,図面および写真の整理を行い,調査報告書『カラコルム遺跡出土陶瓷調査報告書II』(110頁)を刊行した。19年度に公刊した『同I(モンゴル国立歴史博物館保管品)』に続き,モンゴル考古研究所保管の陶瓷であり,この2冊によって,キセリョフ等のロシア科学アカデミーが1948年に発掘調査したこの遺跡出土陶瓷器の全貌が理解できるようになった。英文サマリー付した。 2.研究の成果:その結果,出土陶瓷器の年代観からみると,カラコルムに土城が築かれた1260年代から,明軍の攻撃によって破壊された1380年代の,約120年間のうち,旧南宋の領域で生産され,この草原の都市に運ばれた陶瓷は,14世紀前半の,約50年間の短い期間に限定されており,その前後の陶瓷は確認できない。都市の存続期間と,物資の流通との間には齟齬があること,陶瓷調査によって活発な交易が行われた期間を限定することが出来た。 3.研究の意義と重要性:カラコルム遺跡出土陶瓷器については,内外の研究者から強い関心がもたれていたが,今回の専修大学を中心とする調査によって,全ての資料が考古学的に活用できるような形で公開できた意義は,今後の陶瓷研究およびモンゴル研究に資するところが大きい。この仕事に対してモンゴル研究者が,私ども陶瓷専門研究者を初めて受け入れ,共同研究が実現し,不十分ながらもモンゴル側に若手研究者を育成でき,将来のモンゴル考古学の発展に寄与することができたと確信している。
|