研究課題
基盤研究(B)
バルカン半島東南部の先住民トラキア人の祖先がブルガリアの地に最初に登場したのは青銅器時代の頃で、その後在地の住民と混淆を繰り返しながら民族としての「トラキア人」が形成されたといわれている。それ故青銅器時代の研究はトラキア人の民族形成の問題に直結するテーマとなっている。我々はブルガリア東南部に所在する前期青銅器時代集落遺跡テル・デャドヴォの発掘調査を通じて、トラキア人の民族形成の問題を探っている。過去17次に及ぶ調査の結果、集落内通路を挟んで数軒ずつ住居が塊状となって分布する居住状況が明らかとなり、これは集団構成を反映するものと理解された。ブルガリア前期青銅器時代集落の実態を探るため、隣接するエゼロ遺跡との比較研究を進めたが、集落を画する施設の有無についての問題は未だ解明されずに残されていた。そこで今回ブルガリア側との協定により新たに遺跡東斜面部を本格的に調査することとなり、ここに幅1m、長さ27mのトレンチを設定し、一部について深さ2m-3mの、地山と推測される硬質基盤層まで掘り下げた。その結果深さ120-140cm、検出面の幅310cm、底面部の幅160cmを測る溝状遺構が初めて検出された。但し狭いトレンチ内での検出であり、この「溝」が果たして集落全体を囲む「環濠」として機能していたかどうかは今後の更なる調査・研究に待たなければならない。しかしデャドヴォでは集落形成期に「環濠」が巡っていた可能性を今回初めて具体的に指摘出来たことは大いなる成果であったといえる。ブルガリア考古学界では「溝」が防御施設であったか、祭祀に関わる区画として機能していたかは論議が重ねられているのが現状であるが、今回のデャドヴォ調査により貴重な新しい事例を追加出来たと認識している。なお「溝」の拡がりの実態把握については今後の調査が必要である。
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考古学が語る古代オリエント 15
ページ: 108-115
Dyadovo Prompt Report Series 3
ページ: 1-6
Dyadovo Prompt report Series 3(DPRS 3)
Proceedings of the 15th Annual Meeting of Excavations in West Asia
(資料集)西アジア考古学の編年-日本の考古学調査団からのアプローチ- 記念特別号
ページ: 18-23
Dyadovo Prompt Report Series 2
ページ: 1-9
Dyadovo Prompt Report Series 2(DPRS 2)
Chronological Study by the Japanese Expedition, Japanese Society for West Asian Archaeology(Special Edition)