研究概要 |
本年度は平成19年2月28日〜3月24日の期間,インド共和国内において現地調査を実施しました。初年度の調査として,従来は調査研究の対象とされることが少なかった中小規模の石窟(群)中から,研究目的に適い今後に発展しうる可能性があると判断した遺跡を選定し踏査しました。 具体的には前2世紀〜後2世紀ごろに造営された前期石窟を様式的に継承する開墾例に着目し,後3世紀以降に造営されたマハラーシュトラ州南部のジュンナル石窟,カラード石窟,パンハーレ・カージ石窟などを踏査しました。調査では,主要石窟の略測図の作成や画像記録の撮影など,次年度以降の調査研究にかかる基礎資料の作成を推進しました。これらの石窟の中には,先行時期の開墾例では塔院(礼拝堂)と僧院を別個に造営するのに対して,両者を同一窟内に造営するという特徴を示すようになる事例が観察されます。この型式は後5世紀以降の後期石窟で主流となることから,従来設定されていた石窟造営中断期の見直しと先駆的形態の出現確認という観点から,重要な成果と判断できます。 また,時期的に併行する類似形態の石窟例として,グジャラート州に所在するタラージャー石窟やサーナー石窟などを踏査し,基礎資料を作成しました。これらの石窟にはヒンドゥー教に属する石窟も含みますが,様式展開の観点から同時代の独立した建造物と相互に影響を及ぼしたという想定を具体的に確認できる事例として重要であることが判明しました。 この間,当該地域の考古学的指導者であるデカン大学考古学部のV.シンデ教授や,ジュンナル石窟をはじめとした石窟寺院全般について豊富な調査経験を有するV.シュレーシュ氏,J.シュリーカント氏など石窟寺院の専門研究者と意見交換し,次年度以降の調査方針と対象遺跡についての貴重な情報や史資料の提供を受けました。
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