研究概要 |
本年度は平成20年2月22日〜3月18日の期間,インド共和国内において現地調査を実施しました。第2年度の調査として初年度に引き続き,従来は調査研究の対象とされることが少なかった中小規模の石窟(群)中から,研究目的に適い今後に発展しうる可能性があると判断した遺跡を選定し踏査しました。具体的には前2世紀〜後2世紀ごろに造営された前期石窟を様式的に継承する開墾例に着目し,後3世紀以降に造営されたマハラーシュトラ州南部のカラード石窟やパンハーレ・カージ石窟,クダー石窟などを踏査しました。調査では,測定器を利用した主要石窟の正確な立地データの取得や画像記録の作成など,本調査研究にかかる基礎資料の作成を推進しました。これらの石窟の中には,先行時期の開鑿例では塔院(礼拝堂)と僧院を別個に造営するのに対して,両者を同一窟内に造営するという特徴を示すようになる事例が観察されます。この型式は後5世紀以降の後期石窟で主流となることから,その先駆的形態の出現の確認と従来の定説である石窟造営中断期の再検討という観点において重要な成果と判断します。あわせて,上記と比較資料とするため,アジャンター石窟やエローラ石窟,ピタルコーラ石窟などの標式的な石窟群を調査しました。この間,当該地域の考古学的指導者であるデカン大学考古学部のV.シンデ教授や,インド政府考古局アウランガーバード支局長K.V.ラオ氏など石窟寺院の専門研究者と意見交換し,次年度以降の調査方針と対象遺跡についての貴重な情報や史資料の提供を受けました。
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