研究概要 |
本年度は平成20年10月30日〜11月4日の期間,インド共和国内において現地調査を実施しました。最終年度の調査として,初年度,第二年度で実施した中小規模の石窟(群)の調査成果を前提に,比較対象資料として,後代の独立建造物の様相を調査しました。また,本研究課題における主要な調査目的である,後3世紀以降に造営されたマハラーシュトラ州南部のカラード石窟やパンハーレ・カージ石窟,クダー石窟などの調査で入手した主要石窟の正確な立地データや画像記録など,基礎データの整理を継続して行いました。また,このデータと比較検討するため,先行時期の礼拝堂(祠堂)と僧院を別個に造営する形態から,両者を同一窟内に造営するという特徴を示す折衷的な造営事例,さらに後5世紀以降の後期石窟で主流となる両者が合体した塔院型式への変遷過程を確認するという観点から,アジャンター石窟やエローラ石窟,ピタルコーラ石窟,オーランガバード石窟など,標式的な大型石窟群の先行調査を含めた先行研究を含む調査成果を整理しました。これらを通じて,従来の定説である前期・後期石窟間における造営中断期の存在を再検討できる,後期石窟に対する先駆的形態の出現の確認と石窟造営期間の連続性の推定という,重要な成果を実証しつつあります。この間,当該地域の考古学的指導者であるデカン大学考古学部のV.シンデ教授や,インド政府考古局アウランガーバード支局長K.V.ラオ氏など石窟寺院の専門研究者と意見交換し,別途刊行を企画している調査報告書の内容に反映する主要遺跡についての貴重な情報や史資料の提供を受けました。
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