研究概要 |
ケニア中央部アバーデア山地北東斜面に展開する集落群のなかから上部村・下部村をそれぞれ1つずつ選択して農家世帯標本調査を実施し,農耕・森林資源利用を含む生計の基礎情報を収集するとともに,両村の間に形成された相互依存の地域システムが,薪材調達や生計多様化を可能にし,また干ばつ対策(食料調達,家畜退避)に寄与する重要な条件となっていることを明らかにした。これを通して,地域システムが各集落・各世帯での農業集約化・生計多様化を進める上で果たしている役割を見極めるのに適切な人やモノの流れ,および関係について見通しが立った。並行して,研究対象地域の衛星データ,および現地で行った地表検証の結果を用いて,オブジェクト・べースの土地被覆分類を行い,土地被覆・利用の全体像を広域的につかむとともに,過去20年弱の期間における土地被覆変化域を検出した。これによって,とくに破壊が著しい森林保護区域を特定して,それに隣接する集落を第3の事例村として選び,萌芽更新による村民の薪材利用の実態を視察した。農民生計の基盤をなす耕地の地形変化プロセスについては,10の1乗年単位で農耕土の大規模流亡が顕在し,一方半乾燥地域でのシートウオッシュの斜面更新強度が一般に小さく,発現開始期が最近である可能性を指摘できる反面,一部にウオッシュによるデグラデーションが顕著な箇所も存在し,土地利用形態に大きく寄与していることを,2006 HighLand symposium on environmental change, geomorphic processes, land degradation, and rehabilitation in tropical and subtropical highlands (06年9月エチオピア)などで発表した。並行して現地調査を行い,地形調査・斜面水文観測を継続・拡大させた。
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