研究概要 |
1 前年度現地調査における地表検証の結果に基づき,衛星データを解析して対象地域内の一森林保護区における1960年代初頭から2006年までの植生被覆変化(森林の顕著な破壊と叢林化)を検出することによって,近傍農村住民による森林利用の実態(建材皆伐と薪炭材採取)を大局的に把握した。 2 9月期の調査では,定点観測点での各降雨イベントの降雨強度とこれに対応する土壌水分変化過程のモニタリング・データの回収を行った。 3 採取した土壌の物理的特性を明らかにするために,室内土質試験を実施するとともに,放射性炭素年代測定を行った。 4 8〜9月期には,アバーデア山脈北東斜面の2つの森林保護区周辺に定めた調査対象集落における世帯調査を継続した。薪炭材採取を通した森林資源への依存度に注目して農家世帯生計の実態を把握するとともに,同地域に展開する諸集落の地域システムの機能を,とくに平常時,および干ばつ・冷害などの非常時における集落間の相互依存関係(食料調達,薪炭材調達,放牧地確保など)に注目しながら検討した。 5 2〜3月期の調査では,8〜9月期の課題に引き続き取り組むとともに,前項1で植生被覆変化を明らかにした森林保護区の近傍農村を対象に加え,そこでの薪炭材採取行動と製炭実態を調査し,森林保護区を利用した生計戦略の実態と,木炭生産とその向都流通の地域システムを把握した。これらを通して,集落間の,さらには農村-都市間の相互依存システムが農業集約化・生計多様化を進める上で果たしている役割を見極め,農民の資産・活動代替能力の変化を吟味し,集落間および農村-都市間の地域システムが農民の生計戦略にとってもつ意義を検討した。 6 2〜3月期の調査では,地形変化プロセス観測機器からデータを回収するとともに,顕著な地形変化が想定される箇所(前項1,5で述べた植生被覆の変化した森林保護区を含む)において地形・表層地質調査,地形測量を続けた。
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