研究概要 |
本研究では,中国の改革開放以後,増加している在日華人ニューカマーズの中国における送出プロセスを,中国における現地調査によって明らかにすることを目的とした。本年度は研究計画の最終年度であり,中国東北地方(吉林省延辺朝鮮族自治州と黒竜江省ハルビン)および福建省福清市において最終調査を実施した。中国東北地方は,1990年代以降,日本へ華人ニューカマーズを多く送出した地域であるが,福建省福清市は,明治時代以降,日本へ渡る華人が多く,伝統的な移民母村であった。 現地調査では両地域において,日本語学校,日本語教育機関,海外留学・労務斡旋会社,日本渡航経験者,日本在留者の留守家族,日系企業などを対象に聞き取り調査,資料収集を行った。 東北地方では,特に日本語能力の高い朝鮮族の間で,1990年代以降,日本への留学ブームが起こった。朝鮮族にとっては,最も身近な外国は韓国であるが,韓国より多くの収入が得られ,子どもの時から学校では,英語でなく日本語を外国語として学んできた朝鮮族にとって,日本は渡航希望先として第1の国であった。 福清においては,日本滞在経験者が帰国後,家屋の新改築が非常に顕著である。日本からの帰国者の生活水準の向上は,周囲の人々の目本渡航への希望を刺激した。しかし,福清出身者の日本における犯罪や不法滞在の増加により,福清出身者に対する日本の入国管理局の審査が厳格化するにつれ,最近は,日本渡航が難しくなっている。その結果,東南アジア,北アメリカ,ヨーロッパ,南アメリカなど日本以外の外国への渡航者が増加している。
|