本研究計画は、ウ・ツァン地方、カム地方、アムド地方における文化復興の実態を広域的実地調査により明らかにすると同時に、集中的実地調査をもとに、僧院・祭りの復興、観光化、チベット人-漢人-回族という多民族間関係の分析に基づき、チベット人における文化復興とアイデンティティ形成のメカニズムを文化人類学的視点から解明することにある。 本年度は本研究課題の目的にそって、研究代表者は、平成19年7月から8月にかけて中国四川省甘孜蔵族自治州のカンゼ地区、デルゲ地区において集中的フィールド調査を実施した。北海道大学大学院生の研究協力者は、平成19年6月から8月にかけて前年度と同じ青海省黄南蔵族自治州尖札県および海東地区化隆回族自治県の村においてフィールド調査を継続した。研究分担者は平成19年7月から8月にかけて、四川省甘孜蔵族自治州のカンゼ地区において、甘孜僧院をはじめとする各僧院の復興、観光化の影響などに関するフィールド調査を実施した。京都大学大学院生の研究協力者は、四川省阿?蔵族羌族自治州松藩県の村において、僧院復興と観光化に関するフィールド調査を継続した。 これらのフィールド調査においては、参与観察、聞き取り、光学カメラ、デジタルカメラ、デジタルVTR、MDレコーダー等の機器による文化人類学的フィールドデータの収集と記録、文献情報資料の収集を行った。 なお、チベット人を対象とするインタビュー調査は、相手の同意と協力のもとに実施し、プライバシーおよび利益の保護に十分配慮した。
|