本研究計画は、ウ・ツァン地方、カム地方、アムド地方における文化復興の実態を広域的実地調査により明らかにすると同時に、集中的実地調査をもとに、僧院・祭りの復興、観光化、チベット人-漢人-回族という多民族間関係の分析に基づき、チベット人における文化復興とアイデンティティ形成のメカニズムを文化人類学的視点から解明することにある。 本年度は本研究課題の目的にそって、研究代表者および研究分担者は、平成20年12月から平成21年1月にかけてインド、デリー地区、ダラムサラ地区、デラドゥン地区におけるウ・ツァン地方、カム地方、アムド地方出身チベット人居住区において、チベットの文化復興に関する文化人類学的情報資料収集のための調査を実施した。北海道大学大学院生の研究協力者は、青海省黄南蔵族自治区尖札県および海東地区化隆回族自治県の村におけるフィールドデータを整理、分析し、平成20年度博士学位申請論文「チベット族による民族間紛争の解決に関する人類学的研究-中国青海省海東地区化隆回族自治県における事例から-」を作成、提出し、学位取得を行った。またチベット文献の収集・整理を行った。京都大学大学院生の研究協力者は、四川省阿〓蔵族羌族自治州松藩県の村において、平成21年1月から3月にかけて僧院復興と観光化に関するフィールド調査を継続した。 これらのフィールド調査}こおいては、参与観察、聞き取り、デジタルカメラ、MDレコーダー等の機器による文化人類学的フィールドデータの収集と記録、文献情報資料の収集を行った。 なお、チベット人を対象とするインタビュー調査は、相手の同意と協力のもとに実施し、プライバシーおよび利益の保護に十分配慮した。
|