近年のグローバル化の進行の中で伝統的宗教が再活力化している状況が見られる。その現れ方は多様でありながら、復古主義的な装いをとりつつも都市中間層を主要な基盤としている点、在家信者における世俗内倫理体系の再編成の追求、最新の情報メディアの駆使等、20世紀後半以後の新たな現象として共通性を持っている。 本プロジェクトでは東南アジアの諸都市で進行しつつある、上記のような変化を、各地域、宗教集団の調査研究実績のある人類学研究者を組織して3年間にわたる共同研究を通じて解明することを目的とした。上座仏教、イスラム教、キリスト教、華人系大乗仏教等における動態を共通の問題意識とし、宗教人口の目常性に迫る調査を基礎にした共同研究として遂行し、過去2年間でタイ、ラオス、カンボジア、マレーシア、インドネシア等に研究組織構成員を派遣し調査を行い基礎的なデータの収集を済ませた。第3年度(最終年度)に当たる本年度においては調査研究の力点を全国的及び国際的ネットワークと日常生活の再編に置いた。各国の首都圏の各宗教組織の中心からトップダウンで進められつつある宗教の再編、活性化の動きの全体構造の掌握に注力した。また近年の宗教改革において海外在住者のネットワークが重要な役割を果たしていることからインターネット等最新のメディアを使ったグローバルな展開の実態を組織中央の側から把握することに努めた。こうした現地調査の成果は、4回にわたって開催された研究報告会の討議を通じてメンバーの間で共有し統合的理解に努めた。また渡航先の大学等において5回にわたる研究集会を開催し現地研究者との研究交流を深めた。研究成果の一部は既にメンバーの執筆論文、学会発表の形で公表されているが、総合的成果を名本プロジェクト報告書の形で刊行した。
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