研究課題
今年度は、エチオピア西部および東部のムスリム・オロモ社会で現地調査を実施した。平成18年8月〜9月、南山大学大学院人間文化研究科文化人類学専攻の院生2名(松波康男・家田愛子)とともに、エチオピア西部ムスリム・オロモが居住する地域(オロミア州西ウォッレガ地方およびベニシャングール・グムズ州)において現地調査を実施した。ここには、ティジャーニー教団の導師アルファキー・アフマド・ウマル(1953年没)を崇敬の対象とする集団が生活をしており、私たちは結婚・出産、参詣儀礼、および霊媒師の3つの側面から、異教共存・融合の実態について調査を実施した。院生2名は、この調査をもとに修士論文を執筆し、本学大学院に提出した。またその後、研究代表者は、10月下旬〜11月上旬の約3週間、エチオピア南東部(オロミア州)アルシ地方のムスリム女性聖者モーミナの墓廟で行われている参詣儀礼において参与観察を行った。参詣儀礼にはキリスト教徒もムスリムも参加し、その多くが精霊憑依による病気に悩む者か、あるいは霊媒師として既に活動している人々であった。その後、モーミナの出身地であるエチオピア北東部(アムハラ州)ウォロ地方の著名なムスリム聖者バッジ・ブシュラの墓廟を訪れ、その功績や同墓廟への参詣儀礼の実態についてインタビューを行った。それによると、今日いわゆるワハビーヤ(イスラーム復興主義者)がその影響力を拡大させる中で聖者廟参詣儀礼に参加するムスリムは減少傾向にあるが、改宗が頻繁に起きるこの地方ではキリスト教徒が参詣儀礼を支える上で重要な役割を果たしていることがわかった。
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Siegbert Uhlig (ed.) Proceedings of the XVth International Conference of Ethiopian Studies (Wiesbaden : Harrassowitz Verlag)
ページ: 119-127