本年度は、8〜9月および10月末〜11月末の2回にわたりエチオピア東部(北東部ウォロ、東部ハラル、南東部アルシ)にみられるムスリム女性聖者モーミナの歴史に関して聞き取り調査を実施するとともに、モーミナがその足跡を残した聖地を一つ一つ歩いて確かめ、そこに今でも受け継がれているハレイブ儀礼や参詣の儀礼について現地調査を実施した。キリスト教からの改宗者であるモーミナについては、その著名さとは裏腹にその人生や功績についてこれまで断片的にしか知られていなかった。研究代表者は、モーミナの子孫から直接、モーミナの人生について聞き取りを行うとともに、参詣儀礼の撮影を行う許可を得ることができた。その結果、参詣儀礼にみられる異教共存の側面が、異教共存を実践しているモーミナの人生そのものと密接に関係していることが明らかになった。モーミナが始めたことで知られるハレイブ儀礼や参詣の儀礼にも異教共存が色濃く表徴されていることがわかった。この参詣儀礼については、映像人類学を学んでいる南山大学大学院研究生松波康男氏を同行し、ビデオ撮影を行った。 またこれまで研究代表者がエチオピア西部で行ってきたティジャーニー導師アルファキー・アフマド・ウマルをめぐる民衆カルトについて、7月にトロンハイムで開催された第16回国際エチオピア学会で口頭発表した。同様に、この民衆カルトの一局面である参詣儀礼について松波康男氏が制作した民族誌映画が同学会のフィールム・フォーラムで上映されるとともに、それについて口頭発表を実施した。
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