平成19年度の研究では、これまで調査してきました外国人労働者を支援する「ロシア・移民センター」の活動内容を単著『虚栄の帝国ロシア-闇に消える「黒い」外国人たち-』(岩波書店、2007年10月)のなかで紹介し、非営利団体がロシア社会ではたしている役割とその限界について論じました。そのなかで特に強調したことは、多くのロシア人や自国大使館でさえ見向きもしない外国人労働者の悲惨な状況を、非恵里団体が積極的な救済に乗り出していることです。ロシア経済の繁栄の影の部分で、こうした非営利団体が活動していることが明らかになりました。他方で、かれらの活動は社会のなかで孤立しており、財政的な基盤が脆弱である点に限界があります。非営利団体といっても、なかには形式的な組織だけのものもあり、ロシア政府や市民たちは「移民センター」のように本来の活動を展開している組織にたいしても、懐疑的であり、非営利団体の活動が拡大しない要因となっています。 この「移民センター」の活動とは別に、おもにロシア国内で活動する青年組織を調査しました。若い研究者たちが結成している「青年アカデミー」では、政府からの給付金が削減されている今日、教育と研究の改善を求めてロシア全土に活動をひろげています。また「若き親衛隊」の活動についても調査しました。この組織はソ連時代のソ連共産党青年組織「コムソモール」に似ており、地域社会のボランティアに従事しています。たとえば道路の清掃や公園の整備、さらには地区の祭りなどを積極的に企画しています。この「若き親衛隊」は、プーチン与党「統一ロシア」が深く関わっており、政治と非営利団体の関係が見えてきました。
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