20年度には、これまで質問紙調査や面接法で行ってきたことの補足及び結果の整理やそれを読み取るための文化的考察を行った。具体的には、それぞれの調査から読み取れることの共通理解のための討論会を行い、且つ文化的理解を深めるため、海外協力者にメールを中心に質問と討論を行ったこと、日本の面接で学生と保護者が残っていた部分について実施したことなどである。また、A4判で173ページの報告書を作成し、内外の研究者に配布した。 その結果、次のような研究の総括な知見が得られた。 保育における母性意識は、深くその国・民族の文化と歴史さらには制度に関わっていることである。制度としては克服していても国民性・民族性として克服しきれないことがあること、また逆に制度によって意識も規定されていること(スウェーデンでは0歳児の社会的保育がなく父母ともに徹底した育児休業が保障されているためか、1歳児からの集団保育には絶対的な信頼感を持っているのに0歳児の集団保育には否定的であって、科学的根拠を示そうとしないなど)があげられる。保育における男女の違いについては、スウェーデンでは、「ない」というところから指針が立てられているが、中国ではいわゆる伝統的な性的役割観に立ち、男性・父親には決断・責任などを求め、女性・母親には優しさや受けとめる力を求めているなど、国による違いは大きいが、その国の現の反映を読み取ることが必要である。また、4ヵ国のどの国においても男性保育者が少ないという問題は共通していた。なお、国による答え方にも違いが見られ、日本の特徴はイエスとノウが明確ではない所にあった。中庸ということは、迷いを意味し発展につながるとも捉えられるが、明確に意思表示しない場合に、政策として、時の政府の都合の良い母性意識と関わる保育政策が採られないとは限らない。ジェンダーにかかわる文化的なものと制度的なもの関係を更に深める必要が大きい。
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