本研究は、20世紀最後の20年から今日に至るまでの中国と国際法の関係を、国際法の受容、適用および実効性にかかわる理論および実行についての体系的検証を通して、解明することを目的とし、平成18年4月平成21年3月まで3年間にわたって行われたものである。期間中、研究目的に直接関連する4本の論文(計17万字)と間接関連する一本の論文を公表し、研究会報告2回を行った。 公表された具体的テーマは以下の通りである。(1)中国の平和的台頭と国際法。国際秩序に対する中国の受け止め方を中心に、とりわけ大きな経済発展を成し遂げてから国際秩序に対する中国の見方を検証した。(2)中国の国内法における条約の効力と適用。立法と法理論の検証を中心に、条約の効力と適用における実行と問題点を明らかにした.(3)中国の投資保護条約における国有化・収用。開放政策の遂行に当たってきわめて重要な外資の受け入れに関連した法制度の一つとして国有化・収用に関する中国の立法・政策の展開を検証した。(4)中国における主権論争。主権という西洋の国家像の受け入れに関する中国の国際法と国際関係学の探求を検証したものであり、国際秩序に対する中国の姿勢の理解に重要な意義をもつ。また資料収集完了し、執筆中のテーマは、(1)中国における国際法の性質と機能の捉え方、(2)国際紛争解決と中国、(3)国際裁判と中国、(4)中国の海洋法政策とシー・パワー。 こうした研究を通して、『中国と国際法--その開放政策30年の軌跡』という一つの全体テーマを解明することができた。近いうちに、一冊の図書として世に送り出したい。
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