財政・経済・社会保障、労働政策面に関しては、大連立政権という異例の状況下で行われてきた内政面の構造改革政策が2009年9月に実施された連邦議会選挙において国民にどのように評価されたかを総括的に調査するため、連邦議会選挙を経て新政権が発足した直後の11月半ばに約2週間にわたって現地調査を行った。この調査では、連邦議会選挙の結果に関するメディア資料及び世論調査機関の諸文書、大連立政権下での主要政策に関する連邦議会及び連立与党の付属研究機関等の諸文書を収集した。また、選挙で敗北し野党となった社会民主党(SPD)の党大会を傍聴し、代議員等に対して選挙の敗因と今後の党勢立て直しに関する聞き取り調査を行った。その後、これらの調査分析結果を反映させた論文を2009年12月に発表するとともに、2010年3月に本研究全体の報告書を作成した。(横井担当分) 外国人・移民政策に関しては、第一に、これまでの研究成果を踏まえて移民政策研究の基礎となるデータを整理するため、ドイツが公式に移民国に舵を切ったことと連動して外国人ではなく移民に焦点を据えた新たな集計方法を採用した連邦移民難民庁が公表している研究報告を利用し、その主要部分を紹介する作業を行った。第二に、福祉国家改革の担い手であるSPDが危機的局面にあることを解明する作業を行い、社会構造の変化という長期的要因と並び、グローバル化への対応としての福祉縮小に焦点を絞って検討を加えた。第三に、本年がベルリンの壁の崩壊20周年であることを考慮し、壁の犠牲者について考察した。統一したドイツが過去の重荷を引きずっていることに光をあてゐためである。この研究成果については2010年春に東ドイツに関する新著を出版する運びになっている。(近藤担当分)
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