本年度は、ブラジルにおける移民制度の具体的な今の状況を確認するために、サンパウロ市内で日本就労者を集めている日系旅行社45社と、サンパウロから100キロほど離れたモジダスクルーゼス市内で日本就労者を集めている日系旅行社6社に、日本へデカセギに行く者の状況とどのような仕組みで日本就労者を集めているのかを聞き取り調査してきた。また、サンパウロ市内で日系コミュニティが発達しているビラカロン、リペルダージ、サウージ、カーサベルデにおいて不動産業を営む10社の不動産業者に、日本からデカセギで帰国した者たちが、日本就労の成果を不動産投資に向けているかどうかの聞き取り調査を行った。さらに、現地の日系コミュニティがどのような状態になっているのかについて、岩手県人会、宮城県人会、そして大会県人会を対象にして聞き取り調査を行った。 日伯間の移民制度とは、具体的には、現地における日系旅行社と日本国内の業務請負業者の連携によって形成されるものである。本年度の調査研究によって、従来は日系コミュニティ内の閉じたビジネスとして日本就労者への斡旋が行われていたものが、日本からの海外送金を目当てにしてブラジルの都市銀行が日本就労者向けのデカセギローンを用意して金融の国際化に対応している現実をうかがい知ることができた。今年度の研究成果の一部は、12月に東京大学出版会より出した単著『越境する雇用システムと外国人労働者』において既に公表し、日系コミュニティの変容がビジネスの上でも確認されていることを紹介した。
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